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 私は今、樹木に囲まれている。狭い画廊ではあるが、ぐるり四方を赤・青・黄・緑・黒・白・・・のクセの強い「木」の絵に囲まれているうちに、ぼんやりと昔の情景がよみがえって浸ってしまうことがある。

 まだまだ世の中が平和だった昭和という時代、子供たちは遊びとして木に登ることが当たり前だった。運動神経の決して良くない私も、裏の神社の桜や椿の木、柿の木に、大きな実が食べたくてイチジクの木にも登った。そして... 降りられなくなって泣いた  手足をすりむき、落ちてコブを作ったりもした。
 大きな木にスルスルと登っていく男の子たちはヒーローだった  そこには秘密基地と呼ばれる横板の渡された一角があったが、私は一度も行けなかった。10人程の同級生はみんな男子で、私はいつもおじゃま虫だったに違いないが、私の父が怖くておまけのように連れて歩いてくれた。彼らは木の上から八重桜の花を、山茶花の花を、椿の実を、イチジクの実を採ってくれた。
木陰は優しい風が吹き、木々の中は良い香りがした。そんなことを静かに思い出している側で・・・

 K場さん、O恵ちゃんが忙しそうにエアキャップを広げ、カッターを使い、大きな段ボールと格闘している。絵を3枚発送せねばならぬらしい。「一人ボーっとしてんなよ‼ ちゃんとブログ書いてんだろうなぁ⁉」というK場さんの強い強い圧を感じながら、私は自分の世界に浸って神社の椿の木の上から、光る気仙沼湾を見下ろしている。きっと花粉症の薬のせいだ...


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