嬉しい朝

 我が家の近所に、樹木が繁り手入れの行き届いた庭を持つ空き家があって、遊歩道に面した垣根からこぼれるように椿、桜、木蓮・・・etc.の花が咲き、目を楽しませてくれている。ここ数年、その垣根から捨て猫と思われる猫が数匹、顔をのぞかせているのに気がついた🐱

保護されているのか、はたまた… 
いずれ猫も変わっていくのだが、途切れることもない。雪降る夜に仔猫がウロウロしているのを見るといたたまれないが、気にかけているのは私だけではないらしく、そっと垣根の奥に餌や水を差し入れている人も見かける。

 我が家にはとても神経質な愛犬Pがいて、猫を連れて帰ることができない。家族からは「衰弱して動けなくなっていたり、傷を負っていない限り、手を出してはいけないよ」と きつく言われている。それでも朝晩の行き来には様子を見るようにしていて、心配したりホッとしたりしている。

 ふた月前くらいだろうか、明らかに若くない成猫が一匹増えていた。その猫は、人が通るとまるで飼い主を探すように人に近づいてスリスリし、「ニャー」と甘える。よく見ていると、私のようなおばさんには一目散に鳴きながら走り寄っていく。きっと、年配の女性にとても可愛がられて暮らしていたのだろうなぁ・・・と切なくなる。

茶白のきれいだった毛並みは日に日に汚れていって、「最近あまり動かなくなったなぁ」と夫も気にしているようだった。時々、仔猫を保護しようとしている人も見かけるが、若くもない成猫は・・・どうだろう・・・と行く末が不安になる。

 そして案の定、その猫はある日姿を消した。嫌な予感しかない。死んじゃったのかなぁ  世の中の人全部が動物好きとは限らず、考えたくないようなことも考えてしまう・・・  あの子は誰に触られても決して逃げないだろうから。

そうこう心配していたら、ある日垣根のコンクリートの上に手紙が二通、石をのせて飛ばないように置かれてあるのを見つけた。
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 あー  あー  あー  世の中捨てたもんじゃないね。良い人はいっぱいいる。保護してくださった方のお手紙も、その方への感謝のお手紙も、人柄がしのばれる美しい優しい筆跡と文章だった。 今年一番心が躍る朝になった。今夜はビールだビールだ みんなで祝杯だ

 その夜、私は嫌がる愛犬P をギューッと抱きしめた。
「お前はバカだし、愛想も悪くて、おなかも弱いし、外に出ちゃったら誰も保護してくれない。でも安心して。ママは絶対にお前を捨てたりしないから。大好きだよ大好きだよ
愛犬Pは、低くうなりながらも大嫌いなビール臭いキスの雨をじっとこらえていた

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