フローリスト二人
”リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展”で盛り盛りしたお花の絵がいくつかありました。たっぷりした大輪のイングリッシュローズが美しかったこと 一緒に描かれた磁器や銀器の輝きも素敵でしたが、大胆に活けられた花々の華やかさとあでやかさに圧倒されました。きっと金髪で淡い色の瞳の素敵なフローリスト(絶対男性
美男子
の妄想…)が手掛けたのだわぁ・・・
フローリストと言えば、画廊に飾っているお花は30年来の付き合いになるS氏にお任せしております。
彼には28年前に大変お世話になりました。弟が自動車事故で右目の上を28針も縫う怪我をして「もしかしたら見えなくなるかもしれないけど…両親には黙っていて…」と電話を受けた時、根っから古風な私は「それはもう神頼みしかないわ
」と結婚式のために長く伸ばしていた髪を、歌手の和田アキ子さんほどにバッサリと切って願をかけたのです。

その頭を見た式場のスタイリストさんは顔面蒼白
「どうしましょう・・・
」となった時に、「俺が結婚祝いにブーケと髪用の花を用意するから心配すんな
」と申し出てくれたのが、当時 日比谷花壇に勤めるS氏でした。式当日の早朝、見事な胡蝶蘭のブーケと それはそれはたくさんの胡蝶蘭を持って現れ、うろたえがちなスタイリストさんに「全体に挿したら”こけし”になるっちゃ
片側にブーケの様に・・・どれ
」とばかりに頑丈なネットを被った私の頭を見事に花でアレンジしてくれたのであります。





とても素敵な話でしょ?でも、ピンがいっぱい刺さって痛かったし、ものすご
く重かった


今では自分の店を持つ彼は、月に一、二度新しい胡蝶蘭の鉢を抱えてくるのだけれど、大きいの、小さいの、高いの、安いの、手入れが悪いのと、毎回K場さんとのバトルがなかなか面白いです。


もう一人、最近若いフローリストさんがお客様としていらっしゃいました。「彼女にプレゼントしたいので、優しい感じの花の絵を…」と、ここ何年も聞いたことがないようなお話(だいだい、当店に20代の若き男子がお一人様でいらっしゃることは稀なのです。)
もう、みんなで寄ってたかってアレが良い、コレが良いと自分がもらうかのようなはしゃぎよう。その上、あの、あの、あのしまり屋のK場さんが、どこからともなく綺麗な包装紙やらリボンやらを取り出してきて、包んであげるではないですか。まぁ、ビックリ

ポーランドの女流作家のふんわりした水彩画を手にして帰った彼。いつかきっと素敵なフラワーアーティストになるでしょう。
ーそして、後日談。ひと月ちょっと経った頃でしょうか。ある時ガラス扉の向こうに青年が一人。「あーっ、あの時の
」彼女さんがとっても喜んでくれたらしく、「素敵な絵を安く譲ってくださったお礼です。」と言って、夏らしい涼やかなアレンジメントの籠を持ってきてくれたのです。

おやつタイムに・・・「お花屋さん、彼に変えます
(もぐもぐ)」「それはダメでしょ。」「(S氏とは)長い付き合いだからなぁ…」「何かの時にこっそり頼もう
(もぐもぐ)」「そうだそうだ・・・」


女って怖いですね



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