古い絵と若い人
ここ数年 何度か絵をお求めくださっているお客様が、高校生の可愛らしいお嬢さんをお連れになった。 その一週間ほど前に、奥様と二人で「玄関の絵を変えたい」と下見にいらっしゃっていたので、その時候補になっていた作品を次々並べていくと・・・ 気持ち良いくらいに秒速ですっぱりとお嬢さんに却下されていく。
その一つ一つの理由がとても明確で面白かったので、彼女はどんな絵が好きなんだろうと思って、いろいろな作品をお見せしてみた。
意外にも、1921年の古いローランサンの銅版画に目を輝かせた
手のひらほどしかない、淡い線描のモノトーンの作品。 ローランサンのことを全くご存じなかったので、あれこれ話すのを(私の話はくどくて長い…いつも反省しているのだが…)、こくりこくりとうなずきながら一生懸命聞いてくれた
作家の知名度やら、飾り映えやら価格やらを一切考えずに、偶然 心と響きあった作品。 第一次世界大戦後のパリで生まれた小さな絵は、良い人から良い画商へ、そして良い人へ・・・と長い時を愛されて、今回若い彼女へと引き継がれていく。 これで百年を超えて愛されることになるだろう。
嬉しくて、本やら資料やらをたくさん持たせてしまったが、年若い彼女には迷惑だったかなぁ
「スポットさん(私)は古い絵が好きだから・・・」とよく言われます。 言い返すことはしないが、ちょっと違う。
紙やら布やらに描かれた絵画作品は、弱くとても傷みやすい。 長い年月を誰かに守られ、大切に愛しまれてきたからこそ、今なお美しく魅力的で、ここにある作品が好きなのだ。 そうした美術品をキラキラした目をした人に引き継いで渡せる瞬間は、何度体験しても心が沸き立つように嬉しい
前出のお嬢さんは、玄関の絵もバシッと決めた
お父様のお財布は予想外に出費を強いられたかもしれないが、2点ともとても良い作品だった。 彼女のもとにある作品はとても幸せな時を過ごすだろう
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